Guitars590’s blog

愚か者の力を馬鹿にしちゃあいけない。

Chapter10 
どのようにして我々はビンテージフィニッシュのレシピを明らかに出来たか?

 ラッカーは、通常黄色に変色し、染料は色あせ、木は経年変化で暗い色になる。時間と化学変化の力という単純な事実が、ベストなフィニッシャーを学者や探偵、科学者にする原動力である。どのようにビンテージフィニッシュが施されたかを解決するために、我々は彼らがどんな素材を使ったのか、そして、どういう順序で使ったのかを明らかにしなくてはならない。塗装の層を見るために傷を観察したり、証拠の液ダレを見つけるためにサウンドホールを覗き込んだり、ひび割れを検証してみたり、ギターに対して「問い」を発しなければならないこともあるはずだ。過去から現在に至るまでのフィニッシャーは、彼らの仕事を通してあなたと素敵な会話をすることが出来るのだ。しかしあなたは創造的な解釈をする必要がある。フィニッシュが新しかった頃、今から20年から50年前との劇的な相違に現在の我々は感嘆することが多い。
 このセクションでのフィニッシュにたどり着くために、ギターフィニッシュ業界の沢山のエキスパートに意見を求めた。もちろん数少ないベテランも含めて。問題なのは、20年から30年前に何をどのようにおこなったか覚えているか、ということだ。ギター製作会社は彼らが仕入れた材料の細かい記録を保存していなかったし、自分たちがどのようにフィニッシュを施したのかという記録も残していない。塗料がスプレーされたところを見ていないし、誰がスプレーしたかも知らない。だから我々の多くは、我々自身で塗装を形にしていく必要がある。
 我々は、古い楽器とそれについて書かれた本に対する特に貪欲な読者である。どのようにして昔のフィニッシャーが塗装を施したか、その方法を見つけ出すことにみんな夢中になるし、それを活用することにも夢中になっている。そのことが、フィニッシングスケジュールのこのコレクションにつながったし、レシピの出発点でもあったのだ。多くのレシピは真似しやすいと思う。特にこの本の最初の部分から通して読み、作業をしてきた人にはたやすいと思う。しかし、このレシピに突入する前に、シャーロック・ホームズが知りたいと思っているギターフィニッシュの基本ルールをほんの少しあなた方に明かそう。
 まず、ラッカーは黄変する。フィニッシュを上層から下層に向かって分解(分析)したとしよう。クリアラッカーのトップコートが経年変化で黄色になっていることに気づくはずである。古いラッカーは一般にクリアで在り続けると思われている。しかし、多くは、まずアンバーカラーになる。それらはまた、ウォーターホワイトにもなる。しかし、1940年代末に始められたクリスタルクリアバージョンは、多くの多くの製造業者によって多様なアンバーカラーに使われ続けた。それは安価だったからだ。どのようにして使われ始めたのかは、注意すべきではない。多くのラッカーは数年という短期間でアンバーカラーの外観になった。(現在のラッカーはクリスタルクリアであり続けるように製造されるようになった。しかし、新製品だけだ。いずれにせよ、ラッカーは黄色であるように見える)だから、あなたが古いフィニッシュの勉強をしようとすると、(最初にどういう色であったかどうかは別にして)アンバーの層を通して塗装を観察することになる。どちらであったとしても、あなたがフィニッシュの色を決めるときには、それらしく埋め合わせ(補う)する必要があるだろう。その場合、やり過ぎなくてよい。というのも、あなたの新しい塗装もいずれ変化するものだからだ。それはオールドフィニッシュの様に黄変しないかもしれない。しかし、クリアラッカーは、木が暗色になるにつれて変化するだろうし、光沢や色は柔らかく豊かに変化するだろう。
 次に、染料(Stain)は退色する。特に古いNGRアルコール溶剤系の染料は、赤みがかったり青みがかったりする(現在のNGRステインの組成は、かなり退色しにくくなっている)。色はまた移動もする。だから、木地のクリアシーラの上にそれが施されていたら、決定するために強く押すべきであろう。(この文意味不明)木地の中の染料は、溶剤ベースのフィニッシュ剤の中に入り込んでくる;フィニッシュの中の染料は木地の中へと伝播する(侵入する)。これは、アルコールやラッカー溶剤系の染料で顕著である。というのも、それらは非常に簡単にラッカーに溶ける。先に施された塗面に上手く溶け込んでいく。それにもかかわらず、最終的な結果は同じである:たとえ、いつ着色が施されても、最後は木を染めるのだ。これは何がおこなわれているか、常に知る必要がない、ということであり、作業の順序を考える必要が無いということでもあり、大体正確な(確実な)結果を得られるということである。アルコールステインは、工場の木地フィニッシュとして広く流行した。そして現在でも同様である。乾燥が早く、水性ステインが木にしみ込む程は木にしみ込まないからだ。
 最後に、年月がたつと木は暗色になる。長い年月の紫外線と酸化によって木は暗い色になる。例を示そう。あなたがマホガニーのネックを成形し、スプレーをするためのサンディングをおこなった。ところが6ヶ月間作業の中止を余儀なくさせられた。あなたはネックを棚にしまって、そのことを忘れた。半年後、作業に戻ろうとして、ネックを見るとまるで染めたかのように劇的に暗い木地になっていた。フィニッシュを施す前に、現実にネックの色が暗くなる自然の効果を利用するフィニッシャーもいる。木はそれ自身で暗い色になることを忘れてはいけない。そして、経験と時間だけが、その価値をあなたに教えてくれるのだ。
 これらの効果について知るということは、好みのフィニッシュそっくりのものに辿り着く方法を見つける手助けになる。フィニッシュ剤の化学的性質が製造者の都合で変化を受けてしまったとしても、現代のギターフィニッシュの大多数は、マーチンやギブソン、グレッチ、フェンダー、ギルドなど大手の工場で使われていた伝統的なフィニッシュ剤に似ているのだ。1963年以前のツートーンフェンダーサンバーストや1920年ギブソンゴールドサンバーストに近づくことができたことに、未だに我々は驚いているのだ。
 これらのフィニッシングレシピを学ぶにあたって、特有の外観を得るためには1つ以上の方法が通常存在するということを心にとめておいてほしい。ギブソンとグレッチは着色されたフィニッシュの幅広いバリエーションを創造した。(我々の意見としては、最良の外観である)彼らは長年の間にフィニッシュとフィニッシュスタイル(方法)を何度も変えてきた。だが、一貫性のある外観は未だに受け継がれている。あるフィニッシュが他のフィニッシュに極めて近いこともあるが、過程や順番、成分など2つの違いを指摘できる者などいない。・・・確実に違っていたとしても、だ。
 この本の重要な部分を利用することで、あなたが望む外観を得るための、あなた自身の方法に近づくことができるのだ。興味の半分は、それがどのようになされているのかを指摘している。どのようなフィニッシュ方法を選んでも、フィニッシュをしっかりと乾燥させたり、フィニッシュが平らになるようにクラフトマンシップとしての注意を払ったり、フィニッシュが厚くならないようにしたり、しっかりと忠実に作業をおこなえばプロのような外観(出来映え)になるのだ。最終的に正しい外観であるのなら、それは正しいのだ。 内容は、単純なもの、中級レベルのもの、より複雑なものの寄せ集めである。提示された指示よりも、さらに細部にわたって知りたいのならば、この本の最初の部分の中から沢山見つけられるはずだ。もちろん素材に関しても我々の好む材料をリストに示している。だが、塗装の味付けに従って、あなたに変更を求めることがあるということを承知しておいてほしい。あなたがラッカーよりもビニールサンディングシーラーを好むのなら、我々はラッカーを要求する。代用は自由なのだ。もちろん、何かを1ガロン買うよりも、あなたの工房にある、あなたの使っているものを指示することもあるのは、節約を実感しているからだ。自由な発想を。もう一度言う、ある材料をミキシングしたり、手作業、あるいは作業を施すとき他と比べる必要があったら、常にそれを見つけるために、この本の最初の部分をチェックすることができるのだ。

 最後に。あなたの勘と経験を信頼しなさい。ここにあるレシピの多くは、どのようにフィニッシュが施されたか、我々が考えた、我々のバージョンであり、同じ外観を得るために現在の素材でどのように施すことができるか考えたものである。あなたが考える最良の方法があったら、ここにあるレシピをどうか改めてほしい。
 全般にフィニッシングはとんでもなく複雑なものではない。フィニッシュは、繰り返せるという利点を持った工作(作業)である。もし、あなたが、この本で素材とテクニックに関する情報を得たのであれば、後に続くレシピと組み合わせてみることだ。経験を意欲的に重ねて、忍耐であらゆるものを習熟させ、細部に注意を払い・・・そして、スクラップ(端材)で練習を重ねる。そうすれば、必ず結果を得られるはずだ。

                   ダン・アーウィンとドン・マクロスティー