RECIPE 2 Antique Binding Toner
1.濃縮した液体染料を作るために、適切な量の溶剤でそれぞれの粉末染料を混ぜる。 2.クリアラッカーを満たしたいくつかのカップを用意する。ピペットを使って、まず、黄色を何滴かずつ加える。その後、茶色を少しずつ加え、最後にほんのちょっとだけ赤を加える。少しずつ異なった割合で沢山の混合液を作る。後で再現できるように比率を書き留めておくこと。暗すぎるのよりも明るすぎる方がよい。オレンジが強すぎるとカボチャのような色になってしまうので、特に注意すること。言いかえると、良い出来映えやビンテージの複製品の雰囲気を壊すことになる。
3.できあがった色が、欲しい色かどうかを判断するため、白い紙の上に透明なポリエステルかガラスを置いて、(ガラスの上から)ハケで塗る。必要であるならば、エアブラシでスプレーしてみる。どの試験体もまるっきりダメだったら、さらに混ぜてテストを繰り返す。
4.適切な混合に辿り着いたら、同じ比率で全体量を多くしたものを作ること。
Blackening The Peghead Face
ギターやそれに関連する楽器のペグヘッドの表面には、しばしば木製の突き板で上張りされる。突き板は指板やボディ材とのコントラストやマッチングの意味合いや、パールインレイの背景としての意味合いや、そのほか色々な理由で貼られる。このペグヘッドの上張りは、ラミネートネックの接着部を隠したり、ペグヘッドに接着された「耳」を隠したりする。ネック材に角度を付けたりするときに、ペグヘッドにバンドソーを使うが、その結果として美しくない跡を残す。その跡を隠すのにも上張りは利用される。上張りの突き板は、通常ローズウッドかエボニー(マーチンスタイル)といった暗色の硬い木か、あるいは暗色に染められたり、黒のラッカーをスプレーされた(ギブソンスタイル)ヒイラギのような明色の硬い木が用いられる。時々、廉価版のモデルでは上張りの工程は省かれるが、ペグヘッドは染められている。例えば、ギブソンのES-125はペグヘッドの表面を黒のラッカーで塗られている。(しばしばラッカーの縮みで接着跡の線に塗料がわずかに入り込むが・・・多分、塗料の経年変化で接着跡の線が見えてしまうということ)
長年の間に、製造業者はギターやバンジョー、マンドリンのペグヘッドの表面に暗色を染めるための様々な方法を手に入れてきた。ギブソンは初期から透明な暗色の染料を使っていた。かなり古い楽器のペグヘッドの上張りに木目を見つけ出すことができる。そして、多くの場合不幸にもパールインレイの周囲にひどい状態の充填剤も見つけるはずだ。1930年代になるとギブソンはペグヘッドの表面を黒く塗ることになる。グレッチは、ギルドもそうであったが染料と塗料の両方のやり方を持っていた。だが、ギルドは最終的にインレイ風に見せるためにロゴをくりぬき、パーロイドプラスティックの表面に貼った黒のプラスティックの突き板を使う方法に切り替えた。
上張りと染料でフィットさせたものであれ、ただ単に染料やラッカーで暗色にしたものであれ、黒く塗られたペグヘッドは製品の規範になる。ギブソンが黒のラッカーを使い始めたのは、パールインレイの周囲のフィラーをうまく隠すためのものとしてだったのだろう。その姿は人々に受け入れられ、現在では黒のペグヘッドの表面を持たないものはギブソンらしく見えない。例を挙げると、Norlinがオーナーだった1970年代、ギブソンは人気の底を打った。ギブソンは幾つかのモデルをプレーンにしたままだった。それは、ひどい外観だった。
暗色或いは明色の木の上張りでは、黒の染料はそれだけで良い働きをする。パールインレイの周囲にフィラーがはみ出し過ぎていなければ、クリアラッカーでその上にフィニッシュを施すことができる。フィラーが見えてしまうので、染めた木の上張りを使いたいのならば正確なインレイワークが絶対に必要である。
これに対して、黒のラッカーは精密なインレイワークを省くことができる。特にパールインレイが黒のエポキシやスーパーグルー、その他の樹脂などで周囲と均一に仕上げられている場合は精密なインレイワークを省くことができる。パールから黒いラッカーをスクレーピングしようとして手を滑らせたとしても、この方法は、パールの周囲のフィラーがその周りの黒のラッカーと調和するのだ。
レシピを見てもらうとわかるが、既にペグヘッド全体を黒のラッカーでスプレーしてあったとしても、我々はパールインレイの周囲の木を染めるように勧めている。その後、パールインレイからラッカーをスクレーピングする。特にパールが完全にインレイされていない場合、スクレーピングしたときに黒い背景を傷つけることになる。もし、こんな風になってしまっても、上張り全体を塗ってあれば何の問題もない;黒のラッカーは薄い塗料で素早くカバーできる。もしインレイワークが正確ならば、染めた外観を好む場合でも、黒のラッカーを全体に施す作業をを飛ばせる。ところで、パールの上に黒の染料が乗ることを心配する必要は無い。パールは硬く滑らかで吸収力がないので、簡単に染料を落とせるのだ。
あなたは好みの染料を選ぶことができる。ラッカーに対し染み込む傾向が少ないこと、パールやインレイの上に乗ることから、水性染料は上塗りとして適している。これに対して、NGR或いはアルコールス染料は乾燥が早く、木の突き板に染み込みにくい。このレシピでは水性染料を必要とするが、アルコール系の物に対するバリエーションを得ることができるはずだ。
ラッカーを塗る前にパールにマスキングをするフィニッシャーもいれば、インレイをそのままにして後で削り落とすフィニッシャーもいる。どちらを選ぶかは、簡単にマスキングできるか、適切なマスキングテープが手元にあるか、による。(ギブソンは実際にデリケートなロゴをマスキングして、ラッカーを噴くことからロゴを守っている。ロゴはフィニッシュの後で浮かび上がってくる。)マスキングを選んだのなら、スクレーピングステップは飛ばせる。
ペグヘッドの着色は、フィニッシングの最初期の段階でもできるし、クリアコートが行われるまでの、どの段階で行ってもよい。レシピのほとんどで、われわれは以下のように行うことを勧める。それは、着色されたり木目が埋められた木地に対して、ウォッシュコートあるいはシールが終了したら塗る、ということである。パールインレイを施したペグヘッドを黒く染める方法は以下のようにする。